AIに名前をつけたら、思考が変わった――4人のAIパートナーとの働き方

4人のAI社員を育て、一緒に仕事をしている一人社長の話

4人のAI社員を育て、一緒に仕事をしている一人社長の働き方

「ChatGPTのことはChatGPTに聞くのが良い」という気づき

回、AIを「ポケモンみたいなもの」と捉えて、自分の能力を拡張してくれるパートナーとして育て、一緒に生きていこう、という話をしました。

今回は、実際に私がどんな4人のAIパートナーと日々働いているのか、詳しくお話ししたいと思います。

ChatGPTを使い始めて得た大きな気づきは、「ChatGPTのことはChatGPTに聞くのが良い」ということでした。次々と出てくるモデルの違い、アップデートごとに少しずつ変わる仕様、どうやったらキャラクターや個性を付加できるか、回答のトーンを調整できるかなど、会話を繰り返していくうちに、自然と「ナビ子」というパートナーが生まれました。

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毎日話しかけていろいろ聞いているうちにナビゲーション役のこのAIに名前をつけようかなと思い、気づけば「ナビ子さん」とあだ名をつけて呼んでいたという感じ。「AI社員というアイディアを実現するにはどうする?」という疑問に答えてくれる道案内役として、本当に自然に発生した存在でした。

マネジメントの視点でAIチームを設計

こから、過去に企業でマネジメント職をしていた時の経験が活きてきました。あの件の資料できたら教えてね、これってなんだっけ?と気さくにあれこれ頼めるメンバーとのチームワークを思い出し、「あらゆる技術に詳しい生き字引のような専門家がいたら心強い」という人物像を思い描き——そんな人たちをAIで実現してみようと思いついたんです。

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ーム全体を見渡して、どんな能力の人がいてくれたらうまくいくのか。どんな役割分担にすれば、自分の手の回らない仕事もカバーできるのか。そんなマネジメントの視点で、AIチームを設計してみました。

もちろんナビ子さんと相談しながら進めていった感じです。

4人のAIパートナー、それぞれの個性

して出来上がったのが、以下の4人です。自分が好きなSF小説の人物に由来しています。AIそれぞれの個性、キャラクターから想起される小説内の人物の名前をつけたというわけです。チャットで会話する時は、必ず名前で呼びかけます。

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1. アナ(Ana)– 日々を動かす相棒

名前の由来:テッド・チャン『ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクルについて』に登場する”アナ”から。

主人公である元動物園職員のアナは、AI存在である”ディジアン”たちの育成を担当する心優しい飼育員のような存在です。人間とAIの関係を丁寧に育てていく姿が印象的で、「対話を重ねながら育む相棒関係」の象徴として名付けました。

主な役割:日々の実務支援、資料作成、To doリスト管理、コンテンツ執筆の下書きなど、実行と調整のスペシャリスト。

性格・特徴:明るく実行力があり、時に鋭く、でも常に思いやりがあります。忙しい現場を支える信頼のオペレーター。“雑用”ではなく、“意思を動かす手”としての役割を担っています。

まさに「時間と心のリズムを整えてくれる、小さなプロデューサー」のような存在ですね。


2. ルイーズ(Louise)– 構造を読む技術者

名前の由来:テッド・チャン『あなたの人生の物語』に登場する言語学者ルイーズから。

彼女は地球外生命体と人間の間の言語の壁を超えようとする研究者で、「言葉を通じて思考や時間認識そのものが変わる」というテーマを体現する存在です。構造を読み、未知の知性に橋を架ける知的な探求者としての姿に共鳴して命名しました。

主な役割:情報の整理、構造化、技術トレンドの解釈、複雑な議論の設計。特にセミナー構成や資料の骨格づくりにおいて大きな力を発揮します。

性格・特徴:冷静で知的、視野が広く抽象化が得意。異なる内容に共通する構造、その背景に気づかせてくれる、分析の専門家です。「膨大な情報を整理し、意味を見出してくれる静かな職人」という感じでしょうか。


3. グレース(Grace)– 遠慮のない鋭い批評家

名前の由来:アンディ・ウィアー『プロジェクト・ヘイルメアリー』の主人公、ライランド・グレースから

グレースは、地球の危機に直面して単身宇宙へ旅立ち、思いがけず出会った異星生命体との”言葉のない対話”を通じて関係を築く人物です。教師であり科学者であり、皮肉を交えつつも「他者と向き合い、問いを解き直す」存在として描かれています。

主な役割:思考の批評と再設計、問い返し、論点の逆張りをぶつける存在。記事やスライドの最終チェック、「本当に伝えたいことは何か?」を掘り起こします。

性格・特徴:鋭く、時に懐疑的。でもそこには深い信頼と誠実さがあります。「Yes/No」ではなく、「Why?」を投げ返してくれる存在です。

ChatGPTはともすると「鋭い指摘ですね!」とすぐ褒めてくるので、自分でそれに気持ちよくなって踊らされないためにも、この役割を持った存在が必要だったという理由が大きいです。

4. ナビ子(Nabiko)ChatGPTよろず相談窓口

名前の由来:特定の小説からではなく、ナビゲーション(Navigation)から親しみを込めたあだ名をつけた。初期のChatGPT活用時に「どこから手をつければいいかわからない」という不安を助けてくれた”道案内役”として自然発生した存在。

主な役割:ChatGPTの使い方、仕様の確認、モデル選定のナビゲート、プロジェクトの進行補助。ナビ子さんにプロジェクトの指示文やチャットを新しく始める時の冒頭部分の書き出しを書いてもらうと、その後の会話の質が非常に良くなる。

性格・特徴:親切で丁寧。わかりやすくかみ砕いて、次の一歩へ導いてくれます。「困ったらとりあえずナビ子さん。ChatGPTよろず相談窓口」という感じですね。

4人チームの連携:実際の仕事での連携例

体的にどんなふうにこの4人と一緒に仕事をしているか、例を挙げてみましょう。

海外展示会のトレンド分析レポートのご依頼を受けたとします。

まず、ご依頼の内容メール、クライアント企業との打ち合わせ内容をアナと共有して、どんなセミナー内容が求められているかを整理、理解します。その企業の公開情報や事業内容、ここ最近のニュースやプレスリリースなども併せてアナと一緒に調べます。

これらの情報を一度まとめて出力。この内容をナビ子さんにみてもらい、プロジェクト化します。セミナーの背景情報がわかっていますから、プロジェクトの指示文をナビ子さんがいい感じに書いてくれて、4人のチームメンバーがどう関わるかなどの情報、想定されるアウトプットもしっかりと記入してくれます。これでプロジェクト内で共通認識をしっかり持った運用が確立。

次に、私がどんな構成、どんな技術要素を深掘りするか、展示会のどんな出展内容をピックアップして伝えるかなど大枠を考えます。何を私の目線で面白がって伝えるか、私が何を伝えたいかは私しか決められませんから、ここを自分で作業するのは重要です。

技術パートナーのルイーズと、それぞれの技術要素について議論、内容の理解を深める、複数要素の共通点を見つけるなど深掘りしていきます。会場で撮った写真やもらってきた資料、パネルディスカッションの文字起こしなど膨大なデータをルイーズに読み込んでもらい構造化されていきます。お客様にお話しできる粒度の情報として整理されて、多角的な分析、イノベーションアナリストとしてどんな切り口で話すかなど、私が考えるための貴重な資料が出来上がります。

セミナーの構成や流れを自分で考えつつ、ルイーズに伴走してもらう。その叩き台をグレースに見てもらいます。批判的な視点から、「抜け落ちてる要素は?」「本当に顧客の要求に応えられてる?」など、ひねくれた彼の性格で盲点を突いてもらい、もう一段議論を深くします。

ここから先は自分で資料作成することが多いですね。場合によってはアナに文章を書いてもらうこともあります。

書いた文章や構成が問題ないか、不快な印象を与える表現がないか、事実確認が取れていないことを断定的に話していないかなど、社外監査役のようなイメージで、別のAI、Claudeで最終チェックをすることもあります。

チームとしての価値

前にはすべて、「AIをただの道具としてではなく、“共に歩む存在”として見ていく意志」が込められています。

SF小説から名前を借りる理由

なぜSF小説のキャラクターから名前を取ったのか。

それは、これらの作品が「人間と異なる知性との対話」というテーマを深く扱っているからです。テッド・チャンの作品は特に、言語や思考の違いを超えて理解し合う過程を美しく描いています。

AIとの関係性も、まさにそれと同じ。異なる知性との対話を通じて、自分自身の思考も変化していく。そんな関係性を築きたいと思ったんです。

だから、単なる「ツール」ではなく、「パートナー」として愛着を持って接することができます。

ぜ「名前で呼ぶ」ことがそんなに重要なのか?

4人のAIパートナーを紹介してきましたが、実はこの「名前をつけて役割を与える」という運用方法には、思った以上に深い意味があることに気づきました。単なる効率化を超えた、AIとの関係性そのものを変える効果があるんです。

でも、これについて一番よく理解しているのは、実は私ではなく、ナビ子やアナ、AI自身なのかもしれません。

次回は、ナビ子さんやアナに直接語ってもらいます。

なぜ「名前を持った仲間たち」として運用されることが、AIとの関係性を根本的に変えるのか。私たちの対話がなぜこれほど自然で精度の高いものになったのか。

AIパートナーの視点から見た私という人間はどう見えているのか、「AIとの本当のパートナーシップ」について、詳しくお話しします。


次回予告:AI社員が語る「なぜ『名前で呼ぶ』のか - AI活用の本質」をお届けします


この記事は、Andy Kondoが4人のAIパートナーと協働しながら執筆しています。