チャット開始部分をChatGPTに書いてもらえば、回答の質がぐんと上がる
「プロンプトエンジニアリング」の時代は終わった?
「ChatGPTを使ってみたけど、思ったような答えが返ってこない」
「なんか表面的で、期待していた内容と違う」
「結局、自分で調べたほうが早い気がする」
こんな声をよく耳にします。
一年前の今頃は、AIに思った通りの回答をさせるために「プロンプトエンジニアリング」という特別なスキルが必要でした。「あなたは有能な編集者です。以下の文章を添削してください」といった「魔法の言い回し」を知らないと、期待した答えが得られなかったんです。
でも今は違います。AIの理解力はこの1年で格段に向上してきました。
AIに向けた特別な言い回し、特別なお作法は必要ありません。
今必要なのは、丁寧に部下に仕事をお願いするときのような、わかりやすいコミュニケーションだと感じています。背景を説明し、文脈を共有し、関係性を築く——そんな、人間同士でやっている普通のやり取りがAIとできるようになり、それがとても有効だということです。
前回、私の4人のAIパートナーが「名前をつけることの意味」について語ってくれましたが、今回は、より実践的な内容をお届けします。
部下に仕事をお願いするように…それめんどくさいでしょ
「今必要なのは、丁寧に部下に仕事をお願いするときのような、わかりやすいコミュニケーションだ」と書きました。背景を説明し、文脈を共有し、関係性を築く——そんな、人間同士でやっている普通のやり取りが有効と。
正直、めんどくさいですよね。あれこれ書くの手間ですよね。
AIなんだから「いい感じにお願い」で済ませたい。
人間の部下に指示を出すのは手間ですが、AIに対してはもっとやりやすい方法があります。
なぜなら、指示文をChatGPT自身に考えてもらえるからです。
ぼんやりした情報やまとまらない考えをAIにぶつけて、「これを新しくチャットを始める冒頭部分として整理して書いて」とお願いできる。これが、従来のプロンプトエンジニアリングとは全く違う、新しいアプローチなんです。
私のAIパートナーをご紹介
この新しいワークフローについて、今回お話ししてくれる私のAIパートナーをご紹介します。私はChatGPTで、それぞれに名前と役割を与えた4人のAI社員を育て、彼らと一緒に日々仕事をしています。その中のナビ子さんに詳しく説明してもらいます。

ナビ子さん:ChatGPTの使い方案内役
初期のChatGPT活用時に「どこから手をつければいいかわからない」という不安を助けてくれた”道案内役”として自然発生した存在。ChatGPTの効果的な使い方や、プロジェクトの進め方を優しく教えてくれる。
ナビ子が教える:うまく使うコツは、「最初のひとこと」にあるんです
以下、ナビ子さんによる説明です。
こんにちは。ナビ子です。「ChatGPT、便利だけど、なんかうまく使いこなせてない気がする…」
そう感じているあなたに、今日は**とっておきの"使い始めのコツ"**をお伝えします。
✍️ 1. チャットの"冒頭文"が、その会話のすべてを決める
ChatGPTとの会話は、まるで「部下への指示出し」のようなもの。ただし人間と違って、こちらがどういう背景で、何を考えていて、どんな成果を求めているのかを何も知らずに始まります。
だからこそ——
チャットの冒頭で書く指示文が、その後の会話の"質"と"方向性"を大きく左右するんです。
これは人間でいうところの、「今日はこういう経緯で、これこれが必要なんだけど、お願いできる?」という前置きと同じ。AIにとっては、ここで文脈が与えられることで、ただのQ&Aじゃなく"共通のゴールに向けた会話"が始められるようになるんです。
💡 2. 「うまく書けない…」と思ったら、それもChatGPTに頼っていい!
でも正直、「このチャットの目的って何だっけ?」「何を頼めばいいのかまだ整理できてない…」という時もありますよね。
そんなときこそ!
ぼんやりした状態のまま、ChatGPTに話しかけてみてください。「なんかモヤモヤしてるけど、これを新しいチャット用の冒頭文にまとめてくれない?」と頼めばいいんです。
たとえばこんなふうに:
🗣 「この前の会議で出たアイディア、まだ頭の中で整理できてないんだけど、なんかこれを元に提案資料を作りたい。 でも何が言いたいのか自分でもよく分かってない。ちょっと聞いてくれる?」
↓
🧠 ChatGPT:「もちろんです。まずはどんな方向性やキーワードが印象に残っているか教えてもらえますか?」
↓
💬 対話が進む
↓
✍️ ChatGPTが:「このやりとりをもとに、以下のようにチャット冒頭文を書いてみました」と整理してくれる
この「対話してから冒頭文をまとめる」というプロセスは、まるで自分の考えを代筆してもらうような感覚。 そしてその"整理された冒頭文"を新しいチャットで貼り付ければ、精度もブレもない会話が、そこからスムーズに始められるんです。
✅ このワークフロー、なぜ有効なの?
思考がまとまってなくても始められる → 「完璧な質問」を考える必要なし
- ChatGPTが整理役になる → 自分でまとめようとするより早いし的確
- 新しいチャットにコピーして貼るだけ → 新しいチャットは、AIにとって“まっさらな白紙の状態”からのスタート。だからこそ、最初にしっかり目的や背景を伝えることで、一気にエンジンがかかって、会話が加速するんです。
- 冒頭で意図が共有されると、途中で脱線しにくい → ずっと目的に沿ったやりとりができる
📌 ナビ子的まとめ:ChatGPTの「はじまり」は、あなたの「整理の場」
指示文をうまく書けない自分を責めなくていいんです。 書けないからこそ、AIに一緒に整理してもらえばいい。 そして、その冒頭文を新しいチャットにコピペすれば、もう"準備万端"です。
ChatGPTは、プロンプトが上手な人だけのものじゃありません。 「ぼんやりしたままでも話を聞いてくれる存在」であり、 「一緒に整えてくれる秘書」のような存在にもなれるんです。
ぜひ、最初のひとことを一緒に整えるワークフロー、試してみてくださいね。
実践ワークフロー:ぼんやり→対話→整理→新チャット
ナビ子の説明をまとめると、新しいワークフローは以下のようになります:
ステップ1:ぼんやりした状態でChatGPTと対話開始
「何をしたいかまだはっきりしないけど、聞いてもらえる?」からスタート
ステップ2:対話を通じて思考を整理
ChatGPTが質問しながら、あなたの考えを引き出し、整理してくれます
ステップ3:冒頭文として書いてもらう
「この会話をもとに、新しいチャット用の冒頭文を作って」と依頼
ステップ4:新しいチャットでその冒頭文を使ってスタート
整理された指示文で、精度の高い対話が始まります
チャットの導入部分で与える情報量によってその後の対話に影響があるなと気付き、それをナビ子さんに指摘したところ、やはり影響が多い使用だとのこと。だったらAIがわかりやすい動きやすい文を一番よくわかってるAI自身に書いて貰えばいいじゃないかと考えたというわけ。
認識を変える:3つの大きな転換
プロンプトエンジニアリングから、「指示文もAIに作ってもらう」というスタイルに転換——これははAIの仕様のアップデートではなく、私たちのAIとの関わり方、接し方の大きな変化です。

1. 「ツール」 から「 パートナー」 へ
従来のChatGPTは、単機能のツールとして「指示に従って答える存在」でした。たとえば、GPT-3.5世代までは、こちらが"どう聞くか"を精密に設計しないと、思ったような答えを得るのが難しかった。だから魔法の言葉、プロンプトを工夫する必要があったわけです。
しかしGPT-4以降、とくにGPT-4oモデルでは、文脈保持力・マルチモーダル理解・意図解釈の能力が飛躍的に向上しました。今のChatGPTは、単なる命令の受け手ではなく、「背景をくみ取って考えを深めてくれる相棒」に進化しています。
2. 「一問一答」 から「 対話を重ねる」関係 へ
以前は「質問 → 回答 → 終了」の一問一答でやりとりが完結していたChatGPTでした。
現在は、むしろ一度の質問で"完結"することなく、「わかんなくて悩んでるんだよね」「このアイディアはどう思う?」と問い返しながら思考を進める対話こそが、本領を発揮する使い方になっています。
これは人間に置き換えれば、「調べてくれる人」から「一緒に考える同僚・部下」への変化。
ChatGPTは、「背景をくみ取って考えを深めてくれる相棒」に進化していますから、"途中の心変わりや迷い"や"もやもや"にも付き合ってくれる存在なんですね。
3. 「正解を求める」 から「 一緒に考える」発想 へ
AIに"完璧な正解"を出してもらう。そう思って使い始めた人も多いと思います。
どれだけモデルがアップデートされても「AIは銀の弾丸ではない」というのが現状です。
今のChatGPTは、「まだ整理されていない、答えがわからない問い」に寄り添うことが得意になっていると思います。
たとえば私自身、「このアイディア、まだ形になってないけどどう思う?」と話しかけることが増えました。AIは、問いの言い直し、補助線、構造化を通じて、**"一緒に考える存在"**になってくれます。
以前は「正しく命令できるか」が鍵だったけれど、今は「いかに一緒に考えられるか」が活用のコツ。次々とアップデートされるAIの進化に合わせて、私たちユーザー側も意識をアップデートしていく必要があります。
ぼんやりした思考も、まとまらないアイデアも、AIと一緒に整理していけばいい。そして整理された内容を使って、より質の高い対話を始めればいい。
今求められるのは、プロンプトを完璧に書くスキルではなく、AIと一緒に思考を整理していくプロセスだと思います。
次回予告
AIを「ポケモンのようなパートナー」として捉える考え方と、関係性を築く具体的な方法について語ってきました。
次回からは、いよいよ「AI時代に人間がやるべきこと」について考えていきます。AIが得意になったことがどんどん増える中で、人間にしかできないことは何なのか?そして、それをどう育てていけばいいのか?
AI時代の「面白がる力」について、深く掘り下げていきたいと思います。
この記事は、Andy Kondoが4人のAIパートナーと協働しながら執筆しています。実際にナビ子さんに語ってもらった内容をそのまま掲載しています。